スタッフブログ

2026.05.26更新

厚生労働省の面白い記事があったので要約して皆様にご紹介します

厚生労働省の職員はこんな想いで政策をつくられていらっしゃるのだなと思い、皆様にもシェアしたいと思い、ご紹介します。また、国の政策によって当医院でできる取り組みについても合わせてお伝えします!

―年代別に考える予防と口腔ケアの重要性―
「好きなものをおいしく食べる」「家族や友人と楽しく会話をする」。こうした日常の当たり前は、実は歯と口の健康によって支えられています。歯や口の状態は単に“食べるための器官”というだけでなく、全身の健康や生活の質(QOL)、さらには健康寿命にも深く関係しています。
近年、日本では平均寿命が延び、「人生100年時代」と言われるようになりました。しかし、長生きするだけではなく、元気に生活できる期間をいかに延ばすかが大きな課題となっています。その中で注目されているのが「歯と口の健康」です。
厚生労働省は、歯科口腔保健の推進を重要な政策として位置づけ、子どもから高齢者まで、すべての世代に対する口腔ケアや予防歯科を推進しています。本稿では、歯と口の健康がなぜ重要なのか、年代別にどのような問題が起こるのか、そしてどのような予防やケアが必要なのかについて詳しく解説します。

歯と口の健康が全身の健康を左右する
歯や口の健康というと、多くの人は「むし歯にならないようにすること」を思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、歯や口の健康は全身の健康状態と密接に関係しています。
例えば、歯周病は糖尿病や心疾患、脳血管疾患などとの関連が指摘されています。また、噛む力が弱くなると食事の内容が偏り、栄養不足につながります。さらに、口の機能が低下すると会話が減り、人との交流が少なくなり、社会的孤立や認知機能の低下を招く可能性もあります。
つまり、歯と口の健康を守ることは、「食べる」「話す」「笑う」という人間らしい生活を支えるだけでなく、心身の健康全体を維持するために欠かせないのです。

むし歯と歯周病はなぜ起こるのか

〈むし歯〉                                                                                                                         むし歯は、歯に付着した歯垢(プラーク)の中で細菌が増殖し、糖分を分解して酸を作り出すことで発生します。この酸によって歯の表面が溶け続けると、歯に穴が開き、むし歯になります。                                         特に、甘い飲み物やお菓子を頻繁に口にする習慣は、むし歯のリスクを高めます。また、歯磨きが不十分だと細菌が増殖しやすくなります。

〈歯周病〉
歯周病は、歯垢の中の細菌が歯ぐきに炎症を起こす病気です。初期段階では歯ぐきが赤く腫れたり出血したりする「歯肉炎」が起こります。さらに進行すると、歯を支える骨が溶けてしまう「歯周炎」になります。
歯周病は自覚症状が少ないため、気づかないうちに進行し、最終的には歯を失う原因になります。現在、日本人が歯を失う最大の原因はむし歯ではなく歯周病だと言われています。
歯科においてライフステージ別に何を重点に考えていったら良いかをご紹介します。

子どもの口腔ケアの重要性
〈乳幼児期のケア〉
子どもの歯は、生後半年ほどで乳歯が生え始めます。この時期から口腔ケアを始めることが重要です。
乳歯は永久歯より柔らかく、むし歯になりやすい特徴があります。また、乳歯の健康状態は将来の永久歯にも大きな影響を与えます。
そのため、保護者による仕上げ磨きやフッ素入り歯磨き粉の使用、甘い飲食物の与え方に注意することが必要です。
さらに、1歳6か月健診や3歳児健診では、むし歯の有無だけでなく、「食べる」「飲み込む」「話す」といった口腔機能についても相談できます。

口腔機能発達不全症とは
最近では、「口腔機能発達不全症」という言葉も注目されています。
これは、年齢に応じた口の機能が十分に発達していない状態を指します。例えば、
●食べるのに時間がかかる
●うまく飲み込めない
●発音が不明瞭
●口をぽかんと開けている
といった特徴があります。
背景には、柔らかい食べ物中心の食生活や、口周りの筋力不足などがあるとされています。
子どもの頃に十分な口腔機能が育たないと、将来的な歯並びや発音、食事の問題につながる可能性があります。そのため、早期発見と適切な指導が重要です。
当院でも口腔機能発達不全症がないか定期的に検査を行い、チェックしております。具体的には「舌の力の検査」や「唇の力の検査」などを行っています。

学齢期に大切なこと
小学校から高校にかけては、永久歯が生えそろい、顎や顔の成長が進む大切な時期です。
この時期には学校歯科健診が毎年行われます。むし歯の早期発見だけでなく、歯並びや噛み合わせの確認も重要な目的です。
また、部活動や受験勉強などで生活習慣が乱れやすくなる時期でもあります。ジュースやスポーツドリンクを頻繁に飲んだり、夜遅くの飲食が増えたりすると、むし歯リスクが高まります。
学齢期には、自分で歯を守る意識を育てることが重要です。

成人期に増える歯周病
20代から50代にかけて増えるのが歯周病です。
仕事や子育てで忙しくなると、歯科医院への受診が後回しになりがちです。しかし、歯周病は痛みが少ないため、気づいた時にはかなり進行していることがあります。
近年では、日本人の多くが歯を残せるようになってきました。いわゆる「8020運動」の成果により、80歳で20本以上歯を残している人が増えています。
しかし、歯が残っているからこそ、その歯を維持するための管理が重要になっています。特に歯周病対策は、生涯にわたる課題です。
成人期には、
●毎日の歯磨き
●フロスや歯間ブラシの使用
●定期的な歯石除去
●禁煙
●バランスの良い食生活
などが重要になります。
当院ではプロフェッショナルケアとして歯周病安定期治療(以下SPT)いわゆる保険で行えるクリーニングを定期的にしていただくことをおすすめしております。また当院はかかりつけ歯科医機能強化型診療所です。一般的には3か月毎ですがお口の状態に合わせて1か月~3か月毎にSPTを行うことができます!

オーラルフレイルとは何か
高齢期になると、「オーラルフレイル」が問題になります。
オーラルフレイルとは、口の機能が少しずつ衰えていく状態のことです。
例えば、
●硬いものが噛みにくい
●むせやすい
●滑舌が悪くなる
●口が乾く
●食べこぼしが増える
といった変化が現れます。
一見すると小さな変化ですが、放置すると食事量が減り、栄養不足や筋力低下、要介護状態につながる可能性があります。
そのため、高齢者では歯の本数だけでなく、「口の機能」を維持することが重要になります。
当院でも50歳以上の方に口腔機能低下症が無いか検査しております。「舌の力の検査」と「咀嚼の検査」をさせていただき、数値が悪いと項目を増やして口腔内の乾燥や唇や舌の動きの速さ、筋力なども検査します。


高齢期の口腔ケア
高齢になると、通院が難しくなる人も増えます。病気や入院をきっかけに歯科受診が途切れてしまうことも少なくありません。
しかし、だからこそ定期的な口腔ケアが重要です。
高齢期には、
●舌の体操
●唾液腺マッサージ
●入れ歯の管理
●訪問歯科診療の利用
などが有効です。
特に、口からしっかり食べられることは健康寿命を延ばすうえで非常に重要です。
「食べる力」は、生きる力そのものと言っても過言ではありません。
当院でも訪問診療を行っています。訪問診療が行えるのは歯科医院に通うことが困難であるなどのある程度の条件が必要になってきます。

セルフケアとプロフェッショナルケア
歯と口の健康を守るには、「セルフケア」と「プロフェッショナルケア」の両方が必要です。
〈セルフケア〉
●毎日の歯磨き
●フロス・歯間ブラシ
●食生活の改善
●禁煙

〈プロフェッショナルケア〉
●定期歯科健診
●歯石除去
●フッ素塗布
●早期治療
どちらか一方だけでは十分ではありません。
毎日のケアで予防しつつ、歯科医院で専門的なチェックを受けることが重要です。予防歯科が今は主流です、むし歯を治すために行くのではなく、むし歯にならないように定期的にクリーニングをするという考えが主流です。

かかりつけ歯科医を持つ意味
厚生労働省は、「かかりつけ歯科医」の重要性も強調しています。
かかりつけ歯科医とは、生涯を通じて継続的に口腔管理をしてくれる存在です。
単なる治療だけでなく、
●定期健診
●予防指導
●口腔機能の相談
●他の医療機関との連携
●訪問歯科
など、幅広い役割を担っています。
体調や生活背景を理解してくれる歯科医がいることは、長期的な健康維持に大きな安心感を与えます。

予防歯科の時代へ
これからの時代は、「悪くなったら治療する」のではなく、「悪くならないように守る」ことが重要です。
そのためには、
●若いうちからの予防習慣
●定期的な歯科受診
●ライフステージに応じたケア
が欠かせません。
歯と口の健康は、見た目だけでなく、食事、会話、社会参加、全身の健康にまで影響します。
人生100年時代を元気に生きるために、今こそ歯と口の健康について見直すことが大切です。
「自分の歯で食べる」「人と楽しく話す」という当たり前の幸せを守ることが、豊かな人生につながっていくのです。


年代別にやるべき予防とお口のケアを紹介。歯と口の健康が生活の質を爆上げする|厚生労働省(https://mhlw-communication-gov.note.jp/n/n0a5e3b0e10ef)

投稿者: ホワイトラビット歯科医院

2026.05.15更新

今回はビタミンDについてお話します。今回は近年の研究からわかったビタミンDの影響についてです。
 ビタミンDは、骨の健康を維持する栄養素として広く知られていますが、近年では免疫、抗老化、がん予防、腸内環境、妊娠、歯科医療など、全身の健康に関与する重要なホルモン様物質として注目されています。特に血液中の25(OH)D濃度が健康維持の指標として重視されており、不足すると多くの疾患リスクが高まることが分かってきました。

【概要】
・近年の研究でわかっているビタミンDの身体への影響についてご紹介します
・ビタミンDは女性(成人)は9割、男性(成人)は8割程度が欠乏です
・ビタミンD濃度は40ng/mL~80ng/mLが望ましい値です
・ビタミンDは妊娠や小児にも大切な栄養素の1つです
・他にもガン予防、腸内環境を整える、アレルギーや免疫力、認知症や老化を防ぐことにも関与している
・今後は歯科領域とビタミンDについてやビタミンDの摂取方法についてお伝えします

日本人とビタミンD不足
日本人の主要なビタミンD供給源は魚です。しかし近年、魚摂取量の減少によってビタミンD不足が問題となっています。現在では卵も重要な供給源となっていますが、魚を週1回未満しか食べない人は欠乏リスクが高い理由の1つとされています。

ビタミンDの生成と吸収
ビタミンDの供給源は、約80%が日光浴、20%が食事です。皮膚に紫外線B(UVB)が当たると、皮膚中の7-デヒドロコレステロールがプレビタミンDへ変化し、その後熱反応によってビタミンD3が生成されます。色素の濃い皮膚は紫外線を遮断しやすいため、ビタミンD生成効率が低い。UVBは早朝に強いとされ、早朝の日光浴が推奨される。
食事由来のビタミンDは小腸で吸収される脂溶性ビタミンであり、脂肪と一緒に摂取すると吸収率が向上する。吸収後はカイロミクロンを介してリンパへ移行し、肝臓で25-ヒドロキシビタミンD(カルシジオール)へ変換されます。さらに腎臓で活性型ビタミンDへ変換され、細胞表面のビタミンD受容体に結合して作用を発揮します。
血中25(OH)D濃度はビタミンD状態を評価する指標であり、30ng/mL以上が十分量、20ng/mL未満は欠乏とされます。歯科領域にもビタミンDは密接に係ることから当医院では40ng/mL~80ng/mLが望ましい値としております。


疾病予防に必要なビタミンD濃度
血清25(OH)D濃度は疾患予防ごとに目標値が異なります。骨の健康には20ng/mL以上、認知症や心血管疾患予防には30ng/mL以上、高血圧や自己免疫疾患予防には40ng/mL以上が望ましいとされます。さらに、2型糖尿病や乳がん、COVID-19死亡率低下には50~60ng/mL程度が推奨されています。

妊娠・女性医療とビタミンD
ビタミンDは女性の生殖機能にも深く関与しています。卵胞発育、受精、胚着床に影響を与え、体外受精の成功率とも関連しています。妊娠中の母体のビタミンD状態は、胎児や新生児の腸内細菌叢形成にも影響し、アレルギー疾患予防に関与する可能性があります。
また、妊娠中のビタミンD不足は産後うつ病との関連が示されています。さらに、思春期女性では原発性月経困難症の重症度を軽減する効果も報告されています。

母子・小児とビタミンD
妊娠中の母親が十分なビタミンDを摂取すると、子どものエナメル質低形成リスクが低下します。逆に、妊娠中の喫煙は母体ビタミンD低下を引き起こし、小児う蝕やエナメル質欠損リスクを高めます。
小児ではビタミンDサプリメントが骨量増加に有益とされ、1日400~600IU摂取が推奨されています。母乳は完全栄養食とされるが、ビタミンDは不足しやすいため補給が必要です。

がん全般とビタミンD
乳がん、大腸がん、肺がん、膵臓がんでは、25(OH)D濃度が高いほど発症率が低い傾向があるといわれています。活性型ビタミンDであるカルシトリオールには抗がん作用があり、炎症抑制、免疫改善、腫瘍増殖抑制に関与します。
さらに、ビタミンD不足は口腔扁平上皮がんや食道扁平上皮がんのリスク上昇とも関連する。サプリメント補充によって再発予防や治療副作用軽減の可能性も報告されている。

ビタミンDと乳がん・不妊
乳がんは女性のがん死亡原因として大きな割合を占めます。野菜や果物の摂取は乳がんリスクを低下させる一方、脂肪分の多い食事やビタミンD不足はリスク上昇と関連します。
ビタミンD補充を8週間行うことで、炎症性サイトカインであるTNF-αの発現が低下したという報告もあります。また、不妊男性に対するビタミンD補充では、炎症や酸化ストレスが軽減して、テストステロンや性機能の改善が認められています。

腸内環境とビタミンD
ビタミンDは腸管バリア機能を維持する重要な因子です。不足すると腸粘膜バリアが障害され、炎症性腸疾患にかかりやすくなります。潰瘍性大腸炎やクローン病では、25(OH)D欠乏が危険因子として知られています。
また、ビタミンDは腸内細菌叢の調節にも関与します。腸内環境の改善を通して免疫機能や炎症制御に影響を与える可能性があります。

大腸がんとビタミンD
ビタミンDには大腸がんを抑制する作用があると考えられています。ビタミンD受容体は大腸がん初期では増加し、進行期では減少することが知られています。また、ビタミンD活性化酵素であるCYP27B1の発現調節を通じて、消化管へ直接作用します。
血清25(OH)D濃度が十分である人では、大腸がんリスクや死亡率が低いです。特に50ng/mL以上では、大腸がんリスクが約50%低下する可能性が示されています。
さらに、必須アミノ酸トリプトファンや、それを代謝するビフィズス菌由来代謝産物も大腸がん予防と関連しています。

ビタミンDと抗老化
ビタミンD濃度が十分な人では、生物学的老化が抑制される可能性が研究で示されています。ビタミンDには抗酸化作用があり、脂質酸化を抑制し、酸化ストレスを減少させる働きがあります。さらに、スーパーオキシドジスムターゼやグルタチオンペルオキシダーゼなどの抗酸化酵素の発現を高めることで、細胞障害を防げるといわれています。
また、ビタミンDは酸化ストレスを軽減することが報告されており、ヨガの呼吸法や姿勢維持法と合わせて健康寿命延伸に役立つ可能性があるといわれています。

認知症とビタミンD
高齢者では、血中ビタミンD濃度79.9nmol/L(約32ng/mL)が認知機能維持に望ましいとされています。アルツハイマー病や認知症予防においても、ビタミンD不足が危険因子となる可能性があります。

免疫系と自己免疫疾患
ビタミンD受容体はB細胞、T細胞、抗原提示細胞など多くの免疫細胞に存在します。そのため、ビタミンDは免疫調整に重要な役割を果たしています。
不足すると、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、1型糖尿病などの自己免疫疾患と関連しています。また、再発性アフタ性口内炎や口腔扁平苔癬でもビタミンD低下が認められています。

まとめ
ビタミンDは骨代謝だけでなく、免疫、抗炎症、抗酸化、がん予防、妊娠、認知症、腸内環境、歯科治療など全身の健康に関与する重要な栄養素です。現代日本では魚摂取量低下や日光不足によって欠乏者が増えており、適切な日光浴、食事、必要に応じたサプリメント補充が重要です。特に血清25(OH)D濃度を適正範囲に維持することが、健康寿命延伸や疾病予防に大きく寄与すると考えられます。

今回は、研究によるビタミンDの働きをご紹介させていただきました。健康を気づく上で、ビタミンDが必要であることはお分かりいただけましたでしょうか?
今後は「なぜ、歯科医院でビタミンD濃度を測定しているか?」「ビタミンDの摂取方法」などについてお伝えします!

投稿者: ホワイトラビット歯科医院

2026.05.07更新

先日、セミナーに参加したので、その内容をお伝えします!
ご自身に直接関係ない方でも周りの方にお伝えいただければ幸いです♡

【概要】
・マイナス2歳からの予防歯科とは妊娠の約1年前から母親の栄養状態や生活習慣を整えることで、これから生まれてくる子どもの健康や口腔環境の基盤をつくること

日本の現状は、低出生体重児の割合が高く、将来生活習慣病になるリスクが高くなるといわれている

歯科の分野からも妊娠前や妊娠中の栄養状態は、歯の形成や発育、石灰化の過程に大きく関与します

・特に若い女性は糖質や脂質を摂っており、身体に必要なたんぱく質やビタミンミネラルが不足しがちです

・今日から対策できることとして「よく噛んで食べる」「リアルフードを食べる」「朝にタンパク質を摂る」
「ピロリ菌がいた場合除菌をする」


マイナス2歳からの予防歯科」とは、従来の「虫歯になってから治す」「生まれてから予防する」といった考え方を一歩進め、妊娠の約1年前から母親の栄養状態や生活習慣を整えることで、これから生まれてくる子どもの健康や口腔環境の基盤をつくるという新しい予防の概念です。
つまり、子どもの健康は生まれる前から、さらには妊娠する前から始まっているという視点に立った取り組みです。
 この考え方の背景にあるのが「DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)」という概念です。これはイギリスの研究者デビッド・バーカーによって提唱され、胎児期から乳幼児期の環境が、その人の将来の健康状態や病気のかかりやすさに大きな影響を及ぼすとするものです。特に重要とされるのが「人生最初の1000日」で、妊娠期間約280日と、生後2年間(約730日)を合わせた時期を指します。この期間にどのような栄養を取り、どのような環境で過ごすかが、その後の人生の土台を大きく左右します。
たとえば、妊娠中に母体から十分な栄養が供給されなかった場合、胎児は限られたエネルギーで生き延びるために「省エネ型」の体質を獲得します。この体質は出生後、食べ物が豊富な環境に置かれた際にエネルギーを蓄えやすくなり、結果として肥満や2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患といった生活習慣病のリスクを高めることが知られています。さらに、腎臓病や免疫機能の異常、さらにはうつ病や発達障害、統合失調症などの精神疾患との関連も指摘されています。
日本においては、こうした問題が特に顕著に表れています。2500g未満で生まれる「低出生体重児」は先進国の中でも高い水準で、約10人に1人の割合です。その背景には、若い女性の過度なやせ志向や無理なダイエット、栄養不足、高齢出産の増加、不妊治療の影響、そして「小さく産んで大きく育てる」という価値観などがあると考えられています。胎児期は、体のエネルギー代謝や臓器機能の基盤が形成される極めて重要な時期であり、この段階での栄養状態がその後の健康に長く影響を及ぼします。
この影響は歯科領域にも及びます。妊娠前や妊娠中の栄養状態は、歯の形成や発育、石灰化の過程に大きく関与します。例えば、口唇口蓋裂、歯の形態異常、エナメル質形成不全などのリスクが高まる可能性があります。また、歯ぎしりや食いしばり、嘔吐反射の強さ、甘いものを好む傾向といった行動特性や口腔機能にも影響することが知られています。したがって、歯科医療は単なるむし歯や歯周病の治療にとどまらず、全身の健康や栄養状態にまで目を向ける必要があります。
しかし現代の日本人女性の食生活には、多くの課題があります。カロリーは十分、あるいは過剰に摂取しているにもかかわらず、鉄分、タンパク質、ビタミン、ミネラルといった必須栄養素が不足している「現代型栄養失調」が問題となっています。
例えば、朝はパンとカフェラテ、昼はパスタや軽食、間食にお菓子やジュース、夜はご飯と少量のおかずといった食事では、エネルギーは足りていても糖質や脂質などが多くて栄養の質が大きく偏ってしまいます。
特に深刻なのが鉄不足です。20〜40代女性の約65%が貧血または隠れ貧血とされており、月経によって毎月鉄が失われる女性は、意識的に摂取しなければ慢性的に不足しやすい状態にあります。鉄が不足すると、疲れやすさ、だるさ、集中力の低下、イライラなどの症状が現れます。また、甘いものがやめられない、氷を噛む癖がある、髪が抜けやすい、爪が割れやすいといったサインも鉄欠乏の可能性を示しています。
鉄を補うためには、レバー(鶏・牛)、赤身肉(牛・豚)、魚(カツオ、マグロ、イワシ)などの食品を積極的に取り入れることが重要です。加えて、卵や納豆といった食品も良質なタンパク質源として有効です。日々の食事の中でこうした食材を少しずつ取り入れていくことが、健康状態の改善につながります。

DOHaD概念図

 

 

【今日から実践できるポイント】
「よく噛んで食べる」ことが挙げられます。しっかり咀嚼することで唾液の分泌が促され、消化吸収がスムーズになります。むし歯や歯周病があると噛む力が低下し、消化のスタート段階でつまずく原因となります。また、ピロリ菌によって胃に炎症が起こると、胃の働きが低下し、栄養の吸収効率が落ちる可能性があります。そのため、口腔内の健康維持と胃腸環境の改善は密接に関係しています。
「リアルフード」を意識することが重要です。これは、できるだけ自然に近い状態の食材を選び、加工食品の摂取を減らすという考え方です。工場で大量生産された食品ではなく、家庭で調理された食事を中心にすることで、栄養バランスが整いやすくなります。
「朝にタンパク質を摂る」ことも重要なポイントです。成人女性の1日の推奨タンパク質摂取量は約50gですが、妊娠後期にはさらに25g、授乳期には20gの追加が必要とされています。理想的には、毎食20~30gずつと分けて摂取することが望ましいです。たんぱく質は食べ貯めができない栄養です。タンパク質をしっかり摂ることで、鉄やビタミンなどの栄養素も同時に摂取しやすくなります。
④「ピロリ菌」の存在も見逃せません。ピロリ菌は主に幼少期に口から感染し、胃の粘膜に炎症を引き起こします。これにより胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの原因となることが知られており、胃がんの90%以上に関与しているとされています。さらに、ピロリ菌に感染していると、鉄、ビタミンB12、亜鉛、ビタミンC、タンパク質といった栄養素が不足しやすくなります。
ピロリ菌の感染は、歯周病の悪化や口臭、出血とも関連しており、歯科領域とも密接な関係があります。そのため、歯周病が重い場合や原因不明の栄養不足がある場合には、血液検査や胃の検査を通じてピロリ菌の有無を確認し、必要に応じて除菌治療を行うことが推奨されます。ただし、除菌はゴールではなくスタートであり、その後の栄養管理や生活習慣の改善が不可欠です。
胃の粘膜が回復するまでには数年かかることもあるため、長期的な視点でのケアが必要です。
当院では、従来のブラッシング指導だけでなく、管理栄養士による食事指導や血液検査を取り入れた包括的な健康支援が行われています。すべての患者に対して栄養カウンセリングを実施し、個々の状態に応じたアドバイスを提供する取り組みも増えています。また、若年層の方に対しては美容や肌の状態、体調の改善といった関心の高いテーマと結びつけて栄養の重要性を伝える工夫も行っております。加えて50代以上の患者に情報を伝えることで、その子ども世代や孫世代へと知識が広がるという波及効果も期待しております。
さらに、医院公式SNSや資料配布、スタッフ間での情報共有などを通じて、患者への啓発活動も行っております。
【まとめ】
「マイナス2歳からの予防歯科」は、単なる歯の健康管理ではなく、次世代の健康を守るための包括的な取り組みです。日々の食事や生活習慣の積み重ねが、自分自身の健康だけでなく、これから生まれてくる子どもの未来にも大きな影響を与えます。すべてを一度に変える必要はありませんが、できることを一つずつ取り入れていくことが重要です。
今、何を食べ、どのように生活するかという選択が、未来の健康を形づくります。「マイナス2歳からの予防歯科」という視点を持つことで、より広い意味での予防医療が実現し、より健やかな社会づくりにつながっていききたいです。

 

投稿者: ホワイトラビット歯科医院

2026.05.07更新

先日、セミナーに参加したので、その内容をお伝えします!
ご自身に直接関係ない方でも周りの方にお伝えいただければ幸いです♡

【概要】
・マイナス2歳からの予防歯科とは妊娠の約1年前から母親の栄養状態や生活習慣を整えることで、これから生まれてくる子どもの健康や口腔環境の基盤をつくること

日本の現状は、低出生体重児の割合が高く、将来生活習慣病になるリスクが高くなるといわれている

歯科の分野からも妊娠前や妊娠中の栄養状態は、歯の形成や発育、石灰化の過程に大きく関与します

・特に若い女性は糖質や脂質を摂っており、身体に必要なたんぱく質やビタミンミネラルが不足しがちです

・今日から対策できることとして「よく噛んで食べる」「リアルフードを食べる」「朝にタンパク質を摂る」
「ピロリ菌がいた場合除菌をする」


マイナス2歳からの予防歯科」とは、従来の「虫歯になってから治す」「生まれてから予防する」といった考え方を一歩進め、妊娠の約1年前から母親の栄養状態や生活習慣を整えることで、これから生まれてくる子どもの健康や口腔環境の基盤をつくるという新しい予防の概念です。
つまり、子どもの健康は生まれる前から、さらには妊娠する前から始まっているという視点に立った取り組みです。
 この考え方の背景にあるのが「DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)」という概念です。これはイギリスの研究者デビッド・バーカーによって提唱され、胎児期から乳幼児期の環境が、その人の将来の健康状態や病気のかかりやすさに大きな影響を及ぼすとするものです。特に重要とされるのが「人生最初の1000日」で、妊娠期間約280日と、生後2年間(約730日)を合わせた時期を指します。この期間にどのような栄養を取り、どのような環境で過ごすかが、その後の人生の土台を大きく左右します。
たとえば、妊娠中に母体から十分な栄養が供給されなかった場合、胎児は限られたエネルギーで生き延びるために「省エネ型」の体質を獲得します。この体質は出生後、食べ物が豊富な環境に置かれた際にエネルギーを蓄えやすくなり、結果として肥満や2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、心血管疾患といった生活習慣病のリスクを高めることが知られています。さらに、腎臓病や免疫機能の異常、さらにはうつ病や発達障害、統合失調症などの精神疾患との関連も指摘されています。
日本においては、こうした問題が特に顕著に表れています。2500g未満で生まれる「低出生体重児」は先進国の中でも高い水準で、約10人に1人の割合です。その背景には、若い女性の過度なやせ志向や無理なダイエット、栄養不足、高齢出産の増加、不妊治療の影響、そして「小さく産んで大きく育てる」という価値観などがあると考えられています。胎児期は、体のエネルギー代謝や臓器機能の基盤が形成される極めて重要な時期であり、この段階での栄養状態がその後の健康に長く影響を及ぼします。
この影響は歯科領域にも及びます。妊娠前や妊娠中の栄養状態は、歯の形成や発育、石灰化の過程に大きく関与します。例えば、口唇口蓋裂、歯の形態異常、エナメル質形成不全などのリスクが高まる可能性があります。また、歯ぎしりや食いしばり、嘔吐反射の強さ、甘いものを好む傾向といった行動特性や口腔機能にも影響することが知られています。したがって、歯科医療は単なるむし歯や歯周病の治療にとどまらず、全身の健康や栄養状態にまで目を向ける必要があります。
しかし現代の日本人女性の食生活には、多くの課題があります。カロリーは十分、あるいは過剰に摂取しているにもかかわらず、鉄分、タンパク質、ビタミン、ミネラルといった必須栄養素が不足している「現代型栄養失調」が問題となっています。
例えば、朝はパンとカフェラテ、昼はパスタや軽食、間食にお菓子やジュース、夜はご飯と少量のおかずといった食事では、エネルギーは足りていても糖質や脂質などが多くて栄養の質が大きく偏ってしまいます。
特に深刻なのが鉄不足です。20〜40代女性の約65%が貧血または隠れ貧血とされており、月経によって毎月鉄が失われる女性は、意識的に摂取しなければ慢性的に不足しやすい状態にあります。鉄が不足すると、疲れやすさ、だるさ、集中力の低下、イライラなどの症状が現れます。また、甘いものがやめられない、氷を噛む癖がある、髪が抜けやすい、爪が割れやすいといったサインも鉄欠乏の可能性を示しています。
鉄を補うためには、レバー(鶏・牛)、赤身肉(牛・豚)、魚(カツオ、マグロ、イワシ)などの食品を積極的に取り入れることが重要です。加えて、卵や納豆といった食品も良質なタンパク質源として有効です。日々の食事の中でこうした食材を少しずつ取り入れていくことが、健康状態の改善につながります。

DOHaD概念図

 

 

【今日から実践できるポイント】
「よく噛んで食べる」ことが挙げられます。しっかり咀嚼することで唾液の分泌が促され、消化吸収がスムーズになります。むし歯や歯周病があると噛む力が低下し、消化のスタート段階でつまずく原因となります。また、ピロリ菌によって胃に炎症が起こると、胃の働きが低下し、栄養の吸収効率が落ちる可能性があります。そのため、口腔内の健康維持と胃腸環境の改善は密接に関係しています。
「リアルフード」を意識することが重要です。これは、できるだけ自然に近い状態の食材を選び、加工食品の摂取を減らすという考え方です。工場で大量生産された食品ではなく、家庭で調理された食事を中心にすることで、栄養バランスが整いやすくなります。
「朝にタンパク質を摂る」ことも重要なポイントです。成人女性の1日の推奨タンパク質摂取量は約50gですが、妊娠後期にはさらに25g、授乳期には20gの追加が必要とされています。理想的には、毎食20~30gずつと分けて摂取することが望ましいです。たんぱく質は食べ貯めができない栄養です。タンパク質をしっかり摂ることで、鉄やビタミンなどの栄養素も同時に摂取しやすくなります。
④「ピロリ菌」の存在も見逃せません。ピロリ菌は主に幼少期に口から感染し、胃の粘膜に炎症を引き起こします。これにより胃炎や胃潰瘍、さらには胃がんの原因となることが知られており、胃がんの90%以上に関与しているとされています。さらに、ピロリ菌に感染していると、鉄、ビタミンB12、亜鉛、ビタミンC、タンパク質といった栄養素が不足しやすくなります。
ピロリ菌の感染は、歯周病の悪化や口臭、出血とも関連しており、歯科領域とも密接な関係があります。そのため、歯周病が重い場合や原因不明の栄養不足がある場合には、血液検査や胃の検査を通じてピロリ菌の有無を確認し、必要に応じて除菌治療を行うことが推奨されます。ただし、除菌はゴールではなくスタートであり、その後の栄養管理や生活習慣の改善が不可欠です。
胃の粘膜が回復するまでには数年かかることもあるため、長期的な視点でのケアが必要です。
当院では、従来のブラッシング指導だけでなく、管理栄養士による食事指導や血液検査を取り入れた包括的な健康支援が行われています。すべての患者に対して栄養カウンセリングを実施し、個々の状態に応じたアドバイスを提供する取り組みも増えています。また、若年層の方に対しては美容や肌の状態、体調の改善といった関心の高いテーマと結びつけて栄養の重要性を伝える工夫も行っております。加えて50代以上の患者に情報を伝えることで、その子ども世代や孫世代へと知識が広がるという波及効果も期待しております。
さらに、医院公式SNSや資料配布、スタッフ間での情報共有などを通じて、患者への啓発活動も行っております。
【まとめ】
「マイナス2歳からの予防歯科」は、単なる歯の健康管理ではなく、次世代の健康を守るための包括的な取り組みです。日々の食事や生活習慣の積み重ねが、自分自身の健康だけでなく、これから生まれてくる子どもの未来にも大きな影響を与えます。すべてを一度に変える必要はありませんが、できることを一つずつ取り入れていくことが重要です。
今、何を食べ、どのように生活するかという選択が、未来の健康を形づくります。「マイナス2歳からの予防歯科」という視点を持つことで、より広い意味での予防医療が実現し、より健やかな社会づくりにつながっていききたいです。

 

投稿者: ホワイトラビット歯科医院

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